【レッドタートルある島の物語】レッドタートルの感想・評価・解釈を考えてみた
どうも!さくさくです!
2016年9月17日公開のスタジオジブリ作品「レッドタートルある島の物語」を見てきたので感想や評価を書いてみようと思います!
"どこから来たのか どこへ行くのか いのちは?"
まさにこのワードたちが紡ぎ出す、切なく不思議な物語です。
公式サイトはこちら。
ノスタルジック
まず、見終わった感想から書いていきます。
切なさとノスタルジックというんでしょうか。なんとも言えない、すごく余韻の引く作品です。
この作品はなんとセリフがありません。
叫び声や、息遣いの声は入っていますが、意図的なセリフは入っていません。そのため、物語を引っ張っていくのは音楽と、登場人物たち。
セリフがない作品は今までみたことがなくて、画面へ引き込まれる演出ですね。
気がつくと張り付いてしまっています。
そして、どうして?なぜ?といった疑問に思うことと同時に、そういうものなのだ、という不思議な感覚が続きます。
公式サイトをみたときに "いのちは?"というワードがあったときに、やっぱりこれは命そのものについてを描いている作品なんだ、と思いました。
疑問点と解釈
ここから自分の中に残った疑問点や、解釈について書いていこうと思います。
なぜ、亀なのか?
フランスと日本のハイブリッド作品である本作ですが、亀が取り上げられているのにも、きっと意味があると思って考えてみました。
個人的な見解は、日本が昔から亀に対する、命の観点において物語が生み出す世界観や伝えたいこととマッチしていたのではないかと思います。
"いのち"について描かれている作品であることは間違いありません。人間のいのち。亀のいのち。
日本では長生きの象徴として亀が描かれているケースが多いこともあります。
本作でも命の生まれ変わりや、命の循環について書いていると思いますし、そういった"長いいのち"、ヒトよりも長いいのちをもったキャラクターとして亀が描かれていたのではないかと思いました。
ある意味、人間からすれば永遠ともとれる時間を生きる亀が、神様のような人知を超えたような存在として描かれていても不思議ではないと思うのです。
なぜ、いかだをこわしたのか?
本作で登場するレッドタートル、彼女は、いかだを壊しています。
主人公が島から抜け出そうとするといかだを破壊します。
これにはどんな意味があるのでしょうか?
もしかしたら、彼女がイカダを壊したのではないのかも?
こちらでは、見えない力、とされているんですね。
島から出ようとしても出れない。島は、彼を引き込もうとしている。
抗えない、この世に存在するなにか、なのでしょうか。
島が幻説
島事態がもう、幻であったのかもしれません。最初、遭難のシーンから始まりますが、本当は主人公はあの場面で死んでいた。
そこで、天国のような場所で神様である、赤い亀に遭遇する。
悲劇の死に対して哀れんだ赤い亀が、幻を見せていたのかも。
ただ死ぬのではなく、ヒトとして幸せを感じて死んでほしかった。あまりにも、死が早すぎた。若すぎた。いや、死すらこの世の理の1つかもしれません。
ヒトが、子供を産み、だれかを愛するしあわせを伝えたかったのかもしれません。
その天国の領域からは、逃れることができない。だから、いかだを壊すことによって島に滞在させ続けさせるために壊したのでは。
島事態も不思議な空気が漂っています。
茂っている木も、すべて竹です。山でもなく、南国でもない場所で、竹が茂っている。
天国のような不思議な空間を演出していますね。
いかだは何を表すのか
深い意味はないかもしれませんが、個人的には"イカダ"について疑問というか、ひっかかるような印象があります。
あまりにも簡単に作られていますし、何度も壊されることでどんどん大きくなっていきます。
あんなにタンタンとイカダが組み上げられていくものなのでしょうか。大きくする意味も、ちょっと腑に落ちきらないような印象があります
何かを意味しているように感じますが、うむむ・・。
物語の途中で、亀の甲羅が流されていくシーンがあります。
その後に、主人公は作りかけのイカダを沖へと流すのでした。
これは、島から脱出することの諦めなのでしょうか。それとも、イカダが何かを表していて、海へと捧げたのでしょうか。
もしかしたら、自分の死を認めた、という意味かもしれません。
亀の甲羅->自分を縛っていた何か、とすれば、男の生への執着だったりするのかも。
なぜ、津波なのか?
津波のシーンは何を表しているのか。
やっぱり津波、とくると日本の震災と津波を想起せざるをえません。
ふと訪れる、災厄。島を飲み込んでいき、島の竹の大部分を流してしまいます。
いのちは時に、抗えない自然の摂理によって悲しい現実に向き合うときがくることを示しているんでしょうか。
海が、美しくない
画面に映る海が綺麗なコバルトブルーで映るシーンは数シーンしかありません。
あの島に映る空は、灰色や暗い雲、明るくないシーンが多いです。
暗いシーンが多い理由や演出にはきっと意味があると思います。
人生における空が明るいタイミングは一時のもので、残りは暗いどんよりした時間が長いということなのかも。
彼女の正体は?
いったい女性は誰なのでしょうか。
赤い亀である彼女は、どうして主人公の元へとやってきたのでしょうか。
なぜ浜辺へあがってきたのでしょうか。
タイトルにもある、レッドタートル。
物語のキーです。が、難しい。
なぜ赤いのか。どうして亀なのか。
主人公が死を迎えた時、役割を果たしたかのように、彼女は亀の姿へと戻り、海へ還っていきます。
いのちは、海へと還ることをメッセージなのでしょうか。
息子は
息子が生まれ、育ち、そして海へと出て行き還ってくることはありませんでした。
すごく、切ないシーンです。
息子はいつしか島を窮屈に感じているのか、葛藤しているようなシーンが映ります。
両親から離れてしまうことや、見ぬ世界を見たいという思い、その葛藤なのでしょう。
自分の"いのち"がどこまでいけるのか、知りたくなったのかもしれません。
息子こそ、あの島しか知らないのですから。
亀たちと旅立つシーンも、なんともいえない気持ちになります。
劇場や見る人を選らんで。
静かなメッセージを、そっと受け取るような映画です。
見る劇場や、タイミング。そして一緒に見る人をしっかり選んでみてほしい映画だと思います。
できるだけ、静かなタイミングで、静かな劇場がいいとおもいます。
実はおにぎりを持って入ったのですが、食べる咀嚼音が周りに伝わってしまうほどの映画で、全然食べれませんでした。笑
まとめ
すごくメッセージ性が強い映画なのかな、という印象がある反面、一種のアートのような映画だなと思いました。
芸術的。あまりにも抽象的であるからでしょうか。
自分たちがいかに言語から情報を取得しているのかが、この映画を見たことで気がつきました。
また同時に言語がないときでも通ずるものがある、感じるものがあるのだということも意識させられました。
いのちは、どこから来て、どこへ消えていくのか。
果てない問いかけがあなたを待ってます。
ぜひ映画館へと足を運んでください。